「文化交流は長期的な経済投資だ」、シム・ドンソプ韓国文化院院長
入力 : 2013-06-25 13:46:13 / 修正 : 2013-06-25 13:46:13

 

[スポーツソウルジャパン|アン・ビョンチョル記者] 去年起きた独島問題で韓日両国の関係が急速に冷却されたが、1年以上経った今もなかなか関係改善の兆しは見えない。韓日両国でそれぞれ新政権が発足した今も、解決の糸口は見つからないままだ。

 

両国の情勢と連動したように、日本での韓流もその勢いを失っている。熱かったK-POPも韓国ドラマのブームもだんだん冷めていく様子で、毎日のようにテレビで紹介された韓国料理や韓国旅行情報も、その寿命が終わった流行歌のようにその立場を失っている。一部の韓流関係者の間では‘韓流の終わり’という言葉まで出ている状況だ。

 

韓日の政治的対立が両国の経済、社会、文化の面にどんなに大きな影響を与えるかを多くの人々が今回の事態で実感した。両国の関係改善を求める声も高まり、今の状況をどのように打破していくかについての議論と努力も多いに見え始めた。たくさんの関係者は、韓日の問題の根本的な解決策は文化交流であると指摘する。繰り返される両国の政治的対立の中でも文化交流を絶えずに行うと、お互いに対する理解を深めることができ、最悪の事態は避けられるという考えだ。

 

文化交流の重要性を強調する人々の中で駐日韓国文化院のシム・ドンソプ院長(48)が最も積極的だ。韓国文化を現場で直接伝える職に勤めているだけに、韓日文化交流についての具体的なプランと方向性を持ち、何よりも文化交流を通じた韓日両国の明るい未来について固い信念がある。

 

<スポーツソウルジャパン>は、東京都新宿区四谷にある駐日韓国文化院を訪れ、シム・ドンソプ院長から両国の文化交流の必要性と現状、韓国文化院の役割について聞いてみた。

 

シム・ドンソプ院長は、「日韓交流お祭り」の最大の特徴は、韓国文化だけを一方的に強要する形ではないという点だと語った。|アン・ビョンチョル記者

 

- 韓国文化院の歴史と現在進めている活動は?


駐日韓国文化院(以下、文化院)、つまり、東京文化院は1979年5月10日に開館した。全世界に24の韓国文化院の中で、東京文化院が第1号院である。当時、米国の文化院よりも5ヶ月も前に設立された。韓国文化院の主な事業は、やはり韓国文化を日本に紹介することであり、それに関連するさまざまな事業を展開している。約30年前、日本に韓国文化院が設立された時には、その活動に制限があった。しかし、今は日本人の認識が変化し、多様な考え方を持つことになり、文化院の活動もさまざまなジャンルに拡大している。そのお陰で事業を展開することも前と比べて容易になった。例えば、以前は有名韓国映画だけを日本人に紹介したが、今は韓国のミュージカルやK-POPなど色々なジャンルを利用して、より幅広い韓国文化の紹介が可能になった。

 

- 現在、韓国文化院の活動で最も重点を置く事業は?

 

韓国文化院の活動であると同時に、駐日韓国大使館の重要事業の一つである、「日韓交流お祭り」だ。毎年開催し、今年は9月21日から22日に東京日比谷公園で行われる予定。今のように韓日両国の葛藤が激しく対立する時ほど、文化交流を通じて解決策を見つけなければならない。その意味で、「日韓交流お祭り」は重要でありながら良いきっかけになると思う。「日韓交流お祭り」の最大の特徴は、韓国文化だけを一方的に強要する形ではないという点だ。「日韓交流お祭り」では、相手の国に自分の国を紹介することができるように、舞台のステージと観光ブースなどで韓国と日本がほぼ同じ割合で構成される。両国の関係が悪化している今こそ、このようなイベントが中・長期的に重要な役割を果たしていくと思い、今後もそのような方向性を持って進めていきたい。

 

- 両国の対立が激化している状況だが、このような情勢が文化院の活動に及ぼす影響は?

 

K-POPや韓国ドラマの人気が以前と比べて低くなったり、日本で韓国に対する関心と需要が全般的に落ちたのが事実だ。しかし、個人的な考えだが、このような動きは文化院の活動と全く関係ないと思う。韓国文化院を訪れる日本人の方々では、韓国の文化を嫌がる人はいない。韓日関係が政治的、社会的な面で緊張感を強めても、文化院を訪れる日本人のように、韓国ファンは着実に韓国のことを知るために努力する。一度足を運んだ方はまた訪問することになり、韓国に対する愛をさらに深める。日本国民性の一つで、一度愛情を抱くとなかなか変心することがない。重要なのは、外の動きに動揺せず、文化院だけの色や特徴を作りだして日本人がもっと楽しむ空間を提供することだと思う。

 

シム・ドンソプ院長は、文化交流において、成果を論じるのはご法度だと強調した。|アン・ビョンチョル記者

 

- 韓国文化に触れるため、文化院を訪れる日本人の反応は?

 

20年前に日本で勤務した経験がある。その当時、文化院を訪れる日本人は、主に60代と70代で、その大体が植民地時代の韓国をイメージしながら来た。最近の特徴は、若年層が多く訪れることと探求的な姿勢を持って韓国文化に触れたいと思う日本人がたくさん増えたということだ。ドラマで見たものをこちらでもっと勉強したい、韓国旅行に行って触れたものをさらに詳細に調べたい、そういう日本人が大多数であるため、以前の日本人とはそのレバルで雲泥の差がある。文化院を訪れる日本人は、韓国の民謡や韓国語など、より深く、様々な韓国文化に接することになる。興味を持って訪問するだけに高い満足感を示し、紹介する我々も大きなやりがいを感じる。

 

- 文化院の活動の中で最大成果を挙げると?


文化交流において、成果を論じるのはご法度だ。持続的な文化交流を介して得られる政治的、可視的な成果は、ただ関係悪化のスピードをそれ以上加速させないということだけだと思う。文化とは、基本的に水のように流れるもの。この文化は偉いであの文化は悪いという姿勢は間違った考えであり、関係改善にも全く役立たない。相手の文化に対する尊重と愛がベースになれば、どのような対立が存在してもそれ以上悪化させることはないと思う。それが文化交流が担当する役割だ。多くの韓国人は、日本との文化交流を通じて、具体的な、目に見える何らかの成果を得ようとする。しかしそのようなアプローチは反感を買うだけだ。着実に韓国を紹介し、日本の文化も紹介してもらう、このような過程の中で、両国関係の改善のキーが見えてくると思う。たとえば、韓流がなかった時に、今のように両国の関係が悪化したとすれば、日本の世論調査では韓国に対する否定的なイメージばかりが調査されるに違いない。しかし、今は韓流のお陰で、両国の文化を理解するための基礎が整って、その数は以前よりも大幅に少なくなったのが事実だ。韓流の成果であり、文化交流の結果である。
 
- 文化院を運営するに原則や方針があれば?

 

文化院は韓国文化を紹介するところであるが、一方的な文化伝達は望ましくないと思う。一方的な押し通しでなく、日本のことも紹介したり、受けることができる交流の場が重要である。個人的な意見だが、韓国大使館の職員を対象に、日本の歌舞伎などを教えることも検討中だ。

 

- 韓流ブームは、韓国文化と日本文化が出会う足場になった。健全で正しい韓国文化の定着させるために韓国人にどのような姿勢が必要なのか?

 

韓国では"文化強国"という言葉があるが、文化の概念を理解していると、その言葉がどんなにでたらめかが分かる。“アフリカの文化はサべージで、ヨーロッパの文化は優れている”と言う人は慢心に陥った人間だ。自分たちの文化に対する誇りは重要だが、慢心に陥るのは最も警戒するべきだ。韓国でも実際に、‘日流’が定着して久しいだが、アニメーションはもちろん、日本のドラマは以前から韓国で多くの人に愛されている。韓国での人気キャラクターのランキングを見てみると、1位が日本のハローキティで、1〜10位のうち4つが日本のキャラクターだ。韓国文化が日本で高い人気を享受しているからといって、韓国文化が日本文化より優れているとは大間違いだ。文化は水のように、流れて移動するものだと理解した上、日本で韓流が流行している現象を、水流れのプロセスの一部として受け取る認識が求められる。

 

- 韓日の文化交流を、より活発にさせるためには?

 

日本が強い面があれば、韓国が得意な分野もある。日本は漫画やアニメが強く、韓国はドラマに優れている。お互いの弱点を補い、アジアや世界の市場に進出できれば、韓日文化交流はさらに発展すると思う。日本の資本と韓国のアイデアを組み合わせたコンテンツや、ミュージカルに強い日本と韓国が協力し世界ミュージカル市場に進出するなどお互いに協力する道は多い。今後、文化院のレベルでそのようなビジネスモデルについて話し、進めるつもりだ。2015年は韓日国交正常化になって50周年になる年だ。韓日文化交流においても画期的なイベントを企画することができるように努力していきたい。

 

- 多くの在日韓国団体や企業が、民間レベルでの韓日交流を進めている。そのような団体に望むことがあれば?

 

経済の状況がよくなると、文化の面に多くの支援と協力をしてくれればいいと思う。実際に韓国の化粧品が日本で売れる理由は、化粧品の質が優れていることもあるが、韓流スターの影響も大きいだと思う。文化を支援するのは、結局経済に長期投資を行う行為だと気づいてもらいたい。また、日本には在日韓国人の芸術、文化人が多い。韓国文化が花咲くためには、ここで苦労している芸術家、文化人を支援する事業も必ず必要だ。在日本大韓民国民団(民団)で最新在日文化、芸術人のための基金を造成し、サポートを開始した。本当にありがたいことだ。

 

- 今後、韓国文化院の方向や計画は?

 

文化院を、近所のパン屋さんのような場所にさせるのが最終目標だ。つまり、誰もが気楽に文化院を訪れる、そういう場所を作りたい。そのためには、大韓民国政府の傘下機関である韓国文化院が、政府機関というイメージを完全に脱皮しなければならないと思う。近いうちに文化院の建物には、韓国政府機関である観光公社とコンテンツ振興院が入る予定だ。そうなると、以前より多くの見どころが生じる。この利点をさらに活用して、多くの日本人が訪問できるように努力していきたい。

 

シム・ドンソプ院長は、文化院を近所のパン屋さんのような場所にさせたいと自信の目標を語った。|アン・ビョンチョル記者

 

- シム・ドンソプ 韓国文化院長の履歴

 

1988.2      高麗(コリョ)大学 法学士
1999.6~2001.6  文化部 国立中央博物館、文化政策課 勤務
2008.8~2009.12 国立現代美術館 企画運営団長
2009.12~2010.12 カナダ トロント職務研修(Royal Ontario Museum)
2011.3~2011.9  射倖産業統合監督委員会 事務所長
2011.10~     駐日韓国大使館 韓国文化院長
 

 

 

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