[2016 ジャパンブートキャンプ(Source: スタートアップアライアンス)]


韓国と日本はお互いにとってスタートアップ関連のビジネス面での優先順位もそれほど高くない。
韓国スタートアップにとって日本市場は、大きさと成長性どの面においても、北米や中国市場に及ばない。韓国国内で日本語教育の 比重が相対的に激減したため、言語の壁があることも 理由の一だ。日本のスタートアップにおいても、韓国市場は絶対的にサイズが小さく、成長性の面においても東南アジアマーケットと比較にならない。一部の反日感情は事業には直接影響を与えないが、韓国ではスタートアップメディアでさえ日本のスタートアップの記事をほとんど扱わないこともその優先順位や雰囲気を代弁していると言えるだろう。ゆえに、相手国マーケットに参入することは、情報不足からさらに困難なものになる。


それでも意志を持って進出する情熱的なスタートアップを発見することは難しいことではない。マザーズに上場している日本を代表するスタートアップの内の一つである、広告とAIを扱う企業メタップスは、韓国進出を果たし、現地にオフィスを置いて韓国のスタートアップに自ら投資したり、ニュースキュレーションサービスのグノシーも韓国スタートアップに直接投資するなどして韓国での事業拡大を模索している。ノート共有サービスのアルクテラスは日本とタイでの成功をもとに、ノート共有サービスが浸透しにくいと思われてきた韓国で新たに挑戦の機会を狙っている。数年前グリーを筆頭に、日本のいくつかのゲーム会社が韓国進出を試みたがあまり成果を出せず撤退したという歴史があるが、過去の試行錯誤をもとに新たなビジネスチャンスを狙う日本のスタートアップが継続して韓国マーケットへの進出を検討している。


ナビゲーションサービス企業ロックアンドオールは韓国で日系ベンチャーキャピタルの投資を受け日本に進出した後、日本のマップ会社との提携などといった独自の活動を展開し、韓国では当時は勿論今でも記録的な価格で買収されている一方、日本では別途メガベンチャーからの後続の投資を受けるなどの結果を出した。オンラインゲームを開発するブルーホールは、独自進出ではなく、パブリッシャーを介してゲーム大国日本でのサービスを展開し、一時は国別売上規模において最大値を記録するなど、韓国に匹敵するレベルで健闘している。


韓国スタートアップの日本進出の代表的な事例は、やはりネイバーである。最近のサービスであるラインは最初から日本で始まったプロジェクトであるため日本進出の例とするには難しいだろうが、十数年前に韓国のインターネットサービススタートアップが一気に日本進出し、そのほとんどが実績を出せなかった中で最初から現地化によって差別化を図ったことで生き残ったハンゲームというサービスを展開していたのが当時のNHN Japanである。しかし、あのネイバーさえも、当初検索サービスとして日本進出したが結果を出せず一度撤退したことがあるという事実は、スタートアップの海外進出の難しさを示すもう一つの一般的な例であると言えるだろう。


スタートアップの海外進出を支援するために、両国の多くの機関が手を挙げつつある。両国間の進出支援だけを見れば、限定的な情報下では韓国側の活動のほうがより目立つ。日本も経済産業省などでスタートアップの海外進出をサポートするプログラムを提供しているが、主に北米に集中する傾向があり、韓国進出に対する支援は比較的優先順位が低いように感じられる。


韓国未来創造科学部傘下のボントゥーグローバルは海外進出に必要な市場調査、法律調査、マーケティングなど、スタートアップがリソースを集めることが困難な領域においてサポートプログラムを提供してきた。非営利団体スタートアップアライアンスは、毎年ジャパンブートキャンプというイベントを通じて日本進出に関心を持つ韓国のスタートアップが日本業界の状況について学び、交流することができる機会を提供する。在東京韓国政府機関の活動は様々なところで行われている。韓国コンテンツ振興院(KOCCA)は、韓国のビジネスに関心がある日本のアカデミアや業界関係者と韓国系スタートアップを連結させるセミナーやフォーラムを定期的に開催しており、日本で起業した韓国系コンテンツ企業の事業推進と相互交流を支援している。貿易と輸出のイメージが強い大韓貿易投資振興公社(KOTRA)も定期イベントを行う一方でスタートアップ企業のためのセミナーやブース展示を支援している。


自国のスタートアップの海外進出に加えて、海外スタートアップの自国流入のための活動もすでに 成長段階にある。韓国のK-Startupは、外資系スタートアップを選抜し、韓国で成長を促すプログラムとして、これまでの韓国でのスタートアップ支援政策に比べれば異例であると言える。海外スタートアップの誘致に積極的な福岡市もスタートアップビザ制度を設けて、初期事業計画と推進の負担を軽減しており、最隣接国である韓国の立場からすれば非常にポジティブな制度である。


このような雰囲気は、両国間の投資にもつながる。 海外からの投資に障壁があるにもかかわらず、両国間の国境を越えた投資が続いてきた。日本は米国や東南アジアに比べて韓国への関心と投資比重はわずかではあるが、一部のVCたちは韓国のスタートアップに対する投資を試みており、いくつかはソウルに拠点を置いている。グローバルブレインが韓国のファイブ・ロックスに投資した後、米国のタップジョイに売却され、収益を上げた事例は有名だ。サイバーエージェントベンチャーズもまた、初期投資が行われた韓国のスタートアップの後続投資者の役割をする方法などで初期のリスクを軽減していった。 KDDIは韓国の技術企業に投資するために、ファンドや専担人員を設定した。


韓国側でも日本のスタートアップを見つけて投資しようとする流れがある。筆者が属しているボン・エンジェルスは3年前から日本に事務所を置いて着実に投資を続けてきており、後続の投資やM&Aを通じた実績も残している。 その他いくつかの初期投資業者らも日本でのスタートアップネットワーキングのイベントに継続して参加し投資機会を打診しており、海外の投資先を探しているメジャー投資ファンドの一部も東南アジアを中心とする投資対象地域に日本も含めて検討し始めたと伝えられている。


前述したように、両国のスタートアップ業界の交流はまだ始まって間も無く、意味ある成果を上げる余地が十分にある。 次ではこの流れに関連した現在の残念な制約と、生産的な交流の方向性について考える。


*Disclaimer:アクテラスとブルーホールは、筆者が活動するファンドから投資している会社です。


寄稿:金 範錫(キム・ボムソク)
韓国KAISTで工学博士を取得した後、スイスETH工科大学でクレジットスコアリングモデルを研究。現在はボン・エンジェルスベンチャーパートナーズの日本カントリーマネージャーとして活躍中。



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