鄭然柱サムスン物産・副会長が最近海外受注に力を入れ、今年第3四半期の実績改善に成功した。しかし一角では、その攻撃的な海外受注戦略が、とかく実績悪化のブーメランとして返されかねないという指摘が提起された。

 

[スポーツソウルドットコム|ソ・ジェグン記者] サムスン物産が、CEO鄭然柱(チョン・ヨンジュ、62)副会長の攻撃的な海外受注に力が加われ、今年下半期は刮目に値する成長を続けている。業況は悪くなっていくものの、こうしたサムスン物産の疾走と鄭副会長の存在感はいっそう際立つ。しかし一角ではこうした海外受注が“両刃の剣”になる可能性もあり得ると予想している。鄭副会長の“DNA”を受け継いたサムスンエンジニアリングが、無理な海外受注プロジェクトによる後遺症を抱えているからだ。


◆“アーニングサプライズ”サムスン物産
今年第3四半期、サムスン物産の実績は“*アーニングサプライズ”レベルだった。サムスン物産(建設部門)は、今年第3四半期全て3兆3,806億ウォン(約3,235億円)の売上を記録した。これは同年同期より67.4%増加した数字だ。第3四半期の累積売上も9兆1,507億ウォン(約8,758億円)で同期間50%ほど増した。
〔アーニングサプライズ(Earnings Surprise):企業が、新技術情報や新商品情報、業務提携や決算予想などの経営情報を発表すると、株価は通常なんらかの反応をする。その情報が特にこれまで市場では認識されていない情報であれば、株価は大きく反応する。このように、予想されていなかった情報に対する株価の反応を「アーニングサプライズ」と呼ぶ〕
サムスン物産の実績改善の中心には、2010年サムスンエンジニアリングからサムスン物産に移動した鄭副会長がいる。彼がサムスンエンジニアリングで活躍した攻撃的な海外受注政策は、サムスン物産の売上増加として繋がった。


鄭副会長は、1976年安國火災(現サムスン火災)経理課から出発し、サムスン物産の経営支援室・財務担当役員を務めるなど、約20を経理部署で勤務した。その後2003年、サムスンエンジニアリングの最高経営者に就任した鄭副会長は、2010年の定期あいさつ当時、サムスン物産の代表取締役社長として役職を変え、翌年は同社の代表取締役副会長に昇進した典型的な“サムスンマン”である。
2010年、鄭副会長がサムスン物産に移動した当時、サムスン物産は業績不振の状態だった。特に建設部門は相当深刻だった。彼が赴任する前の2009年、第1四半期の営業利益は900億ウォン(約86億円)水準で1,000億にも及ばず、第2四半期に続き第3四半期も“アーニングショック(予想以下の実績)”レベルだった。
同年第3四半期には、営業利益は前期対比14.5%減少した666億ウォン(約63.7億円)を記録し、前年度同期より45%下落した。これにサムスンは、比較的低いサムスン物産の建設部門の競争力強化のために、“鄭副会長カード”と持ち出したのだ。
その選択は正しかった。鄭副会長が赴任してから4年となった今、サムスン物産全ての海外事業の受注額は12兆ウォン(約1兆1,400億円)に達成し、全体受注の70%は全て海外で成した。これは韓国内の単一建設会社の中、年間海外受注規模として最高水準である。特に受注金額だけで6兆4千億ウォン(約612.5億円)、オーストラリア・ロイヒール鉱山の開発事業成立は、全体の海外受注規模の折半にも達する。


◆海外受注の中心は外形拡張、実績悪化のブーメランに心配の声
しかし業界の一角では、サムスン物産の海外受注の中心にある外形拡張が、下手して実績悪化のブーメランとして作用されるという心配の声が出ている。鄭副会長による攻撃的な経営基調をそのまま受け継いだサムスンエンジニアリングの業績不振も、こうした不安を招いているわけだ。
2003年、サムスンエンジニアリングの社長として赴任した鄭副会長は、海外プラント市場で攻撃的な受注戦略に臨み、2006年1兆7.169億ウォンだった売上を2009年は3兆4,714億ウォン(約3,322億円)まで引き上げた。しかしサムスンエンジニアリングは、今年第1四半期で2,198億ウォン(約210.4億円)の営業損失と、1,805億ウォン(約172.8億円)の純損失を記録し、2003年以降初めて赤字転換し、その後今年の第3四半期まで、連日最悪の成績を記録した。
低価政策と新しい市場に対する理解不足、無理に行われた攻撃的受注が、結局実績悪化のブーメランになったのだ。
問題はこのようなサムスンエンジニアリングの実績悪化が、鄭副会長の攻撃的な海外受注戦略と無関係ではないところにある。サムスンエンジニアリングの実績不振の理由として言われる海外受注の一つは、サウジアラビアの国営企業マデンのアルミニウムプロジェクトの工期遅延で、その損失規模は3,000億ウォン(約287.2億円)にのぼる。マデンが発注したプロジェクトは、アルミニウムプロジェクトの他にも3ヶ所がある。
問題となっている受注契約件は、2011年契約した鄭副会長が、サムスン物産に移した後で行われた。通常大型海外プロジェクトの場合、契約が成立される前まで事業計画を構成するに1~3年が所要し、サウジアラビアは、鄭副会長がサムスンエンジニアリングに在職する2007年当時、マデンと1兆ウォン(約957億円)規模の石油プラント受注に成功させた後、会社の外形拡張に核心的な役割をする主要市場だった。
証券街の関係者は「大規模の海外プロジェクトの場合、契約締結後、実質的な実績が反映されるまで数年がかかる」とし「2007年以降、国内の建設景気が沈滞されながら、国内建設社らは先を争って産油国が密集する西アジア地域にフォーカスを合わせたが、その競争が激しいため、低価受注の問題で最近になってからは実績悪化が表面化されている。サムスンエンジニアリングも同じ時期にサウジアラビアを中心として、西アジア地域進出に拍車をかけ、実際たくさんの受注をとった」と説明した。

 

今年3月、低価受注論争に巻き込まれたサムスン物産のオースト・ロイヒール鉱山の開発産業プロジェクト。|提供:サムスン物産

 

◆低価受注に対する論争、解決すべき課題
低価受注を巡る論争も鄭副会長が解決すべき課題だ。サムスンエンジニアリングの最近の実績不振と関連して、業界では「無理な受注と現地市場に対する理解不足、低価受注が実績悪化を招いた」という評価が支配的だ。業社間の受注競争で生き残るために、市場状況、工期に関する十分な考慮なく、無理に入札価格を下げたというのだ。
このような低価受注問題は、サムスン物産でも問題となった。今年サムスン物産の海外受注の中、もっとも大きな比重を占めるオーストラリア・ロイヒール鉱山の開発事業の場合、当初ポスコ建設とSTX建設コンソーシアムの受注になると予想された。しかし後発だったサムスン物産が、競合の63億オーストラリアドルより安い56億オーストラリアドル(約5,210億円)で出し、最終入札に成功した。
当時STX建設・重工業側は、韓国政府の関連部署に「サムスン物産がロイヒール鉱山開発のインフラ建設工事に、ダンピング水準の低い金額を提示したため、受注ができた」という内容の嘆願書を提出した。
これにサムスン物産は「発注者であるロイヒールホールディングスが(競合コンソーシアム)入札を拒否し、競争入札になったため入札に参加しただけだ」と釈明したが、低価受注に対する論争は収まらなかった。


鄭副会長の海外受注戦略と関連した一角の恐れに、サムスン物産側は「サムスンエンジニアリングの業績不振プロジェクトの殆どは、2011年~2012年の間で受注契約を結んだもので、鄭副会長とは全く関係がない。鄭副会長の赴任以降、海外市場の進出と関連して、投資先の確保はもちろん、商品と市場理解に対する徹底的な努力があり、今年下半期にその結実が出てきている」と述べた。
続いて「基本的に収益が創出されることを、事業計画において最も基本となる原則にしているため、利益が生じない市場に対する投資、低価受注のような無謀な受注はしない」としながら「これからも効率的な収益創出ができるように、商品的に新しい市場を開拓することに専念する」と付け加えた。

 

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